本日、私たちは、あたかも歴史の新たな十字路に立っていかのようです。
中国の改革開放を契機に、「中日平和友好条約」の下、私たちは瞬く間に四十年の月日を共にしました。しかし、今日の世界を見渡せば、リスクと不確定性が至るところに満ちています。そのためには、私たちは中国、日本のみならず、全世界の平和と繁栄を築かなければなりません。何らかの安定装置としての錨、アジア・太平洋各国間の協力を強める上での制度・レジームを見出すという差し迫った必要を感じています。
東アジア、ひいては世界の構図が大きく転換する要の時期、上海交通大学日本研究センターは発足する運びとなりました。この新しいプラットホームに時代から与えられた三つの使命があるとみております。
第一に、「海派(上海スタイルの)日本研究」を強化することです。「海派日本研究」は上海交通大学のOBで、著名な政治家・汪道涵先生により提起された命題です。私は、「海派日本研究」の主な特徴とは、中外の連携、太平洋に面し、冷戦思考やゼロサムゲームなどの陳腐な考えを乗り越えて、多元的視野と包容的な思想の形成を指すものだととらえております。言い換えれば、我々がグローバリゼーション、多元化というマクロ的構図の中で、「日本」を位置づけて、西側という他者を対象物に、持ちつ持たれつの中日関係を認識しておく必要があります。上海は、中国の市場経済の中心で、長江流域の牽引役です。そのため、「海派研究」は企業、貿易、金融、水上輸送、アーバン・ガバナンス(都市への管理)、中央と地方の関係などの現実的な問題により多くの関心を寄せ、更なる技術性と専門性が求められることでしょう。
第二に、南洋公学による『日本法規大全』の編訳や、鄧小平氏の呼びかけで定期開催されてきた「中日経済知識交流会」の伝統を発揚した、経済・貿易及び政治・法律分野での対話メカニズムを一層に強化することです。1902年、時の著名な出版人である張元済が南洋公学で『日本法規大全』の編訳プロジェクトを立ち上げました。近代国家づくりに必要な制度や法律に関するありとあらゆる分野の知識が網羅されました。この一連の書物からなる『日本法規大全』が、本研究センターの知的系譜の出発点だと言えます。また、中日両国の経済と貿易の交流及び対話をさらに推進するため、本センターは『中日経済法規大全』の紙媒体と電子版の翻訳と編集を計画しています。
第三に、東アジアのパブリックディプロマシーを促進することです。新時代において、将来に向けたアジアの秩序をめぐり、中日両国は深みのある対談をすべきです。中日平和友好条約締結40周年を記念する際に、より高いレベルで法制の対談をしていく必要があると考えております。2018年9月に、上海交通大学日本研究センターは本学法学院及び日本経営法友会と提携して、東京で「中日企業法務フォーラム」を開催しました。また、同年11月に、本センターは日本華人教授会との共催で、慶応大学三田キャンパスで大型シンポジウム「一帯一路と中日協力」をも開きました。上海交通大学日本研究センターはパブリックディプロマシーの重要な場だと言っても過言ではありません。
時代に与えられたこの三つの使命に基づき、本センターは歴史的チャンスをつかむことを望んで、先端的で、オリジナルな、かつ建設的な研究を推し進めることを目標としています。両国が共同で対応する必要のある問題から切り込んで、プロジェクトをベースに、学科に跨るかつ国境を越えたネットワーク式の提携により、一連の優れた研究成果をあげ、中日両国の文化交流が更なる深まる発展を遂げられるように絶えずに推進していきたいです。